創作物

エッセイ

嘘抹茶の話

“おいしい”抹茶のお菓子って思いつきますか?

毎年春になると世の中は抹茶味の何かしらで溢れる。その中のいくつが「嘘抹茶」なのだろうと考えると私は少々憂鬱な気持ちになる。

「嘘抹茶」とは我が家で生まれた言葉で、なんなら祖父母も知らない、完全に私の家の中だけで通じる言葉である。小学生の頃から抹茶味のものが好きであった私が発見した「本物っぽくない抹茶味」のことを指す。なんとなく粉っぽいような、抹茶というより薬のような、抹茶が好きな私にとってはコーラ好きの人にとってのゼロコーラみたいな存在である。「食べられないことはない。でもできたら美味しい方を食べたい」。そんな感じだ。

 では具体的にどんな商品が嘘抹茶なのか。

 結論、大手の食品メーカーが販売している抹茶味の商品はことごとく嘘抹茶だ。明治も森永もブルボンも嘘抹茶だった。最近で言うとコカ・コーラが綾鷹のブランド名を使用して販売した抹茶ラテが相当する。Twitterで美味しいと話題になり、実際に友達も美味しいと言っていたから飲んでみたら嘘抹茶だった。ただの甘い味付き牛乳として飲めばそれなりに美味しかったのがより一層無念でならなかった。

 ちなみにコンビニスイーツもほとんどが嘘抹茶だ。ただし生菓子は嘘抹茶じゃないことがたまにある。この間セブンイレブンのガトーショコラに抹茶味が出たと聞いて、ショコラの方はとても美味しかったから期待して食べたら嘘抹茶だった。ファミリーマートの抹茶ラテは粉末を牛乳に溶かすということもあってか嘘抹茶感が強く、私は二度と飲まないと決めている。

 逆に嘘抹茶じゃないのはスターバックスの抹茶商品やビアードパパの抹茶シューなどである。スターバックスはわからないが、ビアードパパではアルバイトをしていたのでちゃんとした抹茶を使っていることがわかっている。そのほかパティスリーの抹茶ケーキもきちんと抹茶味がすることがほとんどだ。

 過去に「なぜ嘘抹茶の味がするんだろう」と思って原材料名を確認したことがあるが、特におかしな点はなかったし、共通点を見つけることもできなかった。だから私は毎回、期待と諦めを胸に抱きながら抹茶味の何かしらを買う。

 私が抹茶を好きなことを知っているから、父は定期的に私にコンビニスイーツを買ってきてくれる。それを私は母に「今度は嘘抹茶じゃないといいね」と言われながら食べる。大体は嘘抹茶で、私は渋い顔をしながらそれを食べ進めるのだが、たまにちゃんと美味しい抹茶のものがある。それを父に伝えるとそのコンビニスイーツはレギュラーメンバー入りを果たして、めぼしい新商品がなかったときのお土産になる。私は性能のいい「嘘抹茶発見器」だ。その私に付き合って抹茶の何かしらを食べている母もだんだん判別がつくようになってきた。

 私が思うに、世の中の人は「抹茶味」を知らない。それは私がコーラとゼロコーラの判別がつかないのと同じで、食べ続けて食べ慣れないとわからないものなのだろう。

 とりあえず、スターバックスの抹茶ティーラテが夏限定でアイスでも販売されることを喜ばしく思う。

執筆者

文芸学科/吉野萌

(ジャーナリズム実習II・2021)