創作物

コラムインタビュー

日芸オーディオブック『人生を包む呉服屋』番外編 意外と知らない「和装小物」の世界

 2023年3月12日(日)より開催の「日藝博覧会」では、文芸学科と放送学科のコラボレーションによる「オーディオブック」を公開しています。

 本作は、文芸学科2年生・中脇 和奏さん、田村 杏菜さんが取材執筆したインタビュー記事を、ナレーター・河合紗希子さんが読み上げたもの。日本大学芸術学部がある江古田の街で、老舗の呉服屋「こども呉服店」を経営する店主さんに、江古田への想いや街の変化を語っていただきました。

 この記事では、オーディオブックに盛り込みきれなかったエピソードとして、「こども呉服店」さんが取り扱うユニークな「和装小物」をご紹介します。意外と知らない呉服の世界、ぜひ読んでみてください。


草履カバー

 着物を着るなら欠かせない草履。だが、その多くには滑り止めがついていないため、雨や雪の日など、足場が悪い日には滑りやすいのが難点。加えて、草履を履くときは足袋がほぼ全て剥き出しになってしまい、せっかくの真っ白な足袋が汚れてしまうなんてことも。そんなときに役立つのが草履カバー。特に汚れが付着しやすい爪皮の部分から裏底までをしっかりと覆い、雨雪や汚れから草履をしっかり守ってくれる。さらに、滑り止め用に裏底部分がゴツゴツしているものもあり、転倒の心配もなし。

 

和装用ブラジャー

 振袖、留袖、訪問着……女性の着物にもたくさんの種類があるが、このどれもに共通する着こなしのポイントは、ズバリ体型。着物は日本の伝統衣装。現代では曲線美がはっきりとしたプロポーションに憧れを抱く女性は多いが、着物は反対に、凹凸のないいわゆる「寸胴体型」である方が美しく着られるとされる。実際、着付けをするときにはサラシを巻いて、ボディラインを平らにするべく工夫がなされているわけだが……そんなときに役立つのが和装ブラジャー。これを身に付けるだけで、サラシをぐるぐるキツく巻くよりもずっと簡単に、誰でも体型を補正することができる代物。

 

草鞋用足袋

 草鞋も、稲藁から編まれる日本の伝統的な履き物のひとつ。しかし、その構造は草履や下駄に比べてかなり特徴的。草履の鼻緒がつま先から少し余裕を持った位置につけられるのに対し、草鞋は鼻緒が裏底の先端にあるため、足指が直接地面につく。鼻緒からそのまま続く「緒」と呼ばれる紐を、側部にある小さな輪「乳(ち)」に通し、そのまま踵にある大きな輪「かえし」に通してから、最後に足首に巻く。草履や下駄よりも足に密着するため、山道など足場が不安定でも歩きやすいというメリットはあるものの、硬い稲藁が擦れて素足を傷つけてしまったり、また基本的に一日一足履き潰してしまうものであったため、摩耗が激しい。そんなときに便利なのが、草鞋用足袋。通常の足袋とは異なり、足首まで覆ってくれる作りが特徴で、緒の擦れによる傷を防ぎ、草鞋の磨耗を軽減する。現代では履かれなくなった草鞋だが、伝統行事、特に学校行事で児童が履くときには、子供の柔らかい足を保護するためには欠かせない一品。

 

地下足袋

 地下足袋は、草履用の足袋や草鞋用足袋とは違い、履き物を履かずにこれひとつで歩くことを想定して作られた、裏底がゴム製の機能性に優れた足袋。現代では、主に祭りで神輿を担ぐときに用いられる他、浅草などの観光人力車の俥夫も履いていることがある。いわゆる作業労働用の足袋で、つま先に力を入れやすく、農作業者や鳶職・大工など、力仕事を生業とする人に重宝される。地下足袋にも様々な種類があり、こどもや呉服店では、通常のゴム底意外にも、スポーツスニーカーのようにエアークッションが入っている驚きの高機能製品も取り扱っている。

<了>

執筆者

取材/文芸学科2年 中脇 和奏、田村 杏菜

文/文芸学科2年 中脇 和奏