哲学特論 (森一郎)

通年 4単位 前期課程1・2年 選択科目 理論部門 



■授業のねらい
 本年度の授業では、現代世界を襲うさまざまな危機について考える有力な手がかりとして、ハンナ・アーレントの『人間の条件』を、ていねいに読んでいくことにしたい。


■指導方針
 ハンナ・アーレントは、二十世紀を生きた傑出した知性のひとりである。その彼女を、「女性」とか「ユダヤ人」とか「ハイデガーの恋人」とかいったレッテルで理解したつもりになるのはいただけない。アーレントは、まずもって「哲学者」であった。では哲学者とはいかなる存在か。自分の生きる時代がさし示しているのっぴきならない問題群に、自己の全存在を賭けて取りくもうとする「考える人」である。そうした思考の結晶が、哲学書と呼ばれる。アーレントの主著『人間の条件』は、まさしくそういう意味で、二十世紀の生んだ希有の哲学書である。この授業では、公刊から半世紀を経てますます輝きを増しつつある本書を、じっくり読んでいく。各回の担当者をあらかじめ決め、その人を中心に解釈のさまざまな可能性を検討する。討論に参加する者全員が主体となるいわゆる講読ゼミ形式の授業だが、履修者の過重な負担とならないようできるだけ配慮したい。


■授業及び指導計画


 前期は、イントロダクションのあと、『人間の条件』を最初から読んでいく。
・プロローグ
・第一章 人間の条件
 第一節 活動的生と人間の条件
 第二節 活動的生という用語
 第三節 永遠と不死
・第二章 公的領域と私的領域
 第四節 人間——社会的動物か政治的動物か
 第五節 ポリスと家政


 後期は、前期に引きつづき、『人間の条件』第二章を読みすすめていく。
 第六節 社会的なものの成立
 第七節 公的領域——共通なもの
 第八節 私的領域——財産
 第九節 社会的なものと私的なもの
 第十節 人間の活動諸様式の場所指定


■テキスト及びサブテキスト:
教科書は、ハンナ・アレント『人間の条件』(志水速雄訳、ちくま学芸文庫)。各自購入されたい。参考書としては、なんといっても、Hannah Arendt; The Human Condition, 1958, 2nd ed., The University of Chicago Press, 1998を挙げたい(この英語版原書は、プリントして配布予定)。


■成績評価:平常点(出席、発表、討論への参加等)と、レポートによって行なう。


■E-mail:必要があれば、授業内で伝える。