芸術心理学特論(金子隆芳)

通年  4 単位 前期課程 1 ・ 2 年 選択科目 理論部門


■授業のねらい
 絵画制作と鑑賞について純粋に視覚心理学の立場から講義をする。言い換えればアイコノグラフィーについては述べない。それは絵画史家が十分に論じてきた。ここでは絵画を作家の視的体験の記録と考え、また人がそれをどのように解釈するかに関心がある。


■指導方針
 アバディーン大学(スコットランド)の視覚造形心理学者、パーカー&デレゴウスキーの『視覚と絵画様式』(D. M. Parker & J. B. Deregowski Perception and Artistic Style North Holland, 1990)を講師が抄訳したものを資料として配布し、それについて講師が説明を加えるという形式で講義を行う。姉妹編として同じくデレゴウスキーの『絵画におけるディストーション』(J. B. Deregowski Distortion in Art Kegan Paul, 1984)をサブテキストとする。履修に当って心理学についての事前の知識はとくに必要ではない。それは随時に説明する。学生はそれぞれ研究課題をもっており、講義の内容はいますぐそれに役立つとか、関係があるとかいうことは必ずしもないだろうが、視覚造形にとって視覚心理学は基礎論として重要であり、いつかはそれが必要になり、または役に立つこともあるという姿勢で受講することが期待される。


■授業及び指導計画
<前学期>
1.予備知識1:サイコロジー(心理学)語原考。ギリシヤ神話「プシケとクピド」。
2.予備知識2:心理学の二つの方法論。経験的方法と実験的方法または表現的方法と印象的方法。
3.第1章:素朴な眼と知的な眼。ギブソンの生態学的知覚論、エピトミックとアイドリック、視覚系の情報変換過程と様式の変化。
4.第2章:錯覚としての遠近法。絵画的奥行の生理光学的手がかりと心理学的手がかり。
5.第3章:両眼視の役割。絵画の二重性の役割、ポッツォ天井画の矛盾、逆遠近法の謎。
6.第4章:線状遠近法の限界。視覚のベリディカリティ、眼とカメラ・オブスキュラ。
7.第5章:標準的視点と特異的視点。中心投射と周辺投射、周辺投射とディストーション、形の情報量。
8.第6章:ディストーションの遍在性。絵画におけるコンベンショナリズム、様式の文化交差、原始絵画における遠近法。



<後学期>
9.第7章:眼に内在する手がかり。視線の運動と視覚情報走査、単一の収束点と複数の収束点(ファン・エイク、ゴッホ)、周辺視効果(セザンヌ)。
10.第8章:錯視を利用した絵画。オップアート(ライレイ、バザレリ)。
11.第9章:絵画と実物。リアリズムの意味、絵画における一次特性と2次特性、視覚の許容性、絵画の変遷と発達心理学、文化と遠近法。
12.サブテキスト第1章:序論。絵画におけるディストーション、絵画手がかり、パースペクティヴと反パースペクティヴ、エピトミックとアイドリック。
13.第2章:単一画像の絵画。絵画の歴史的発展、石器時代の絵画、標準形と非標準形絵画、現代の原始絵画(ゴーギャン、スーラ)、紋章デザイン、 ]線絵画。
14.第3章:単一画像から複数画像へ。古代エジプト絵画と東洋絵画における絵画技法の限界,絵画におけるパルス・プロ・トト。
15.第4章:絵画よりパターンへ。再現的デザインから幾何学的デザインへ、パターンの対称化傾向、
16.第5章:まとめ


■テキスト及びサブテキスト:使用せず。資料配布。

■成績評価:平常点の総合。