独文芸学研究 I(清水健次)
通年 4 単位 前期課程 1 ・ 2 年 選択必須科目 研究・創作部門
■授業のねらい カフカ文学とその現代性について考察する。
カフカ文学全体の中からこの講義に沿った作品を講読し、何故カフカ文学が現代のわれわれに享受を与えるのかを考えて見ることにする。
■指導方針
必要な限りの問題を提起し、その問題に関する資料を提供し、カフカがその出自から独自の人生―与えられた時代的・社会的条件、精神的進展あるいは発展、そしてその間の相剋―を体験する中で、世界文学に到達したことについて創作者カフカ(作家)の側及び読者の側に立って考察し、創作の手法について、延いては人間の在り方について深い思索を重ねるように慫慂する。
勿論その際、われわれは作家の文学の本質をユダヤ性という特殊条件で説明するという還元主義的方法を用いるのではないので、逆に作家がその特殊条件から、そしてユダヤ人としてのアイデンティティから発して、その詩才をもって到達した人間精神の独創的普遍性(産み出した独自の文学作品)を考察するわけである。
■授業及び指導計画
<前学期>
1.ガイダンス
2.ユダヤ人、ユダヤ系作家とは
3.カフカの家系、セファルディム、アシュケナジム
4.ドイツ語圏の大学のユダヤ学の現状
5.カフカの時代のドイツ、プラハ(オーストリア)におけるユダヤ人の時代的・社会的状況
6.カフカとプラハサークル、シオニズム運動
7.カフカとユダヤ教——『父への手紙』
8.旧約聖書、タルムード(ミシュナー、ゲマラ)、ミドラーシュ
9.カフカ文学のユダヤ的モティーフ——『変身』、『審判』、『城』等
10.カフカの作品の登場人物名及びその機能
11.カフカ文学の詩的形式——カフカ文学の物語、ハガダ、譬喩、箴言の意味
12.ガリチア地方のユダヤ人との接触、ユダヤ人のあいだの物語とガリチア地方の民間物語
13.ギルグールと『変身』
14.再びカフカと時代的・社会的状況——カフカとベルリーン、プラハ、ウィーン——サン・レモ会議(『ミレナの手紙』、『日記』等)
15.『皇帝のメッセージ』等に見られるカフカの「神話化」の手法
<後学期>
1.『万里の長城が築かれたとき』等に見られるカフカの「詩的弁証法」的手法
2.カフカの言葉、カフカの言う「書くこと」の意味(特に諸短編小説、『日記』、『城』)
3.カフカの「言葉による天上の裁き」(『判決』)、祈りとして「書くこと」(『ある戦いの記録』)
4.カフカ文学に見られる掟あるいは真理——タルムードと『審判』
5.再び『審判』、『城』に対するユダヤ教的、キリスト教的、無神論的解釈
6.カフカの『審判』に対するショーレムの掟論(ヨブ記)
7.カフカと実存主義、ポスト・ポスト・・・モダン
8.再びカフカとカバラ
9.シトラー・アクラー、救済・合一の考え方(『変身』、『審判』、『城』、『失踪者』等)
10.カフカ文学と東洋——カフカの物語と禅問答
11.カフカ文学の物語形式の意味
12.カフカと現代(1)——カフカ文学における真理を表現する形式
13.現代ヨーロッパに見られる文学理論
14.カフカと現代(2)——カフカ文学の世界文学への生成及び文学理論に対する寄与
15.レポート提出(<何故カフカ文学が現代のわれわれに享受を与えるか>についての纏め)
■テキスト及びサブテキスト資料はコピーして提供し、参考文献はその都度教示する。
■成績評価
レポート